ピーター バー 
 <有楽町>


2013年3月


ピーター バー 鎌田真理

 


ザ・ペニンシュラ東京の最上階。皇居外苑や日比谷公園が一望できる「Peterバー」に、鎌田真理さんはいる。 


ホテルマンを目指して専門学校で学んだ。ホテルで実地研修を受けるうち、強い思いを抱くようになった。


「バーで研修してみて、バーテンダーってかっこいい、そう思うようになったんです。それからはみるみる、バーテンダーになりたいという気持ちが大きくなって、職業にしたいと思う自分がいました」 


大きな瞳を輝かせながら、鎌田さんは言う。けれどもそのとき、ジントニックがウィスキーなのかカクテルなのかもわからなかったという。なぜなら鎌田さん、働いたことはあっても、バーに飲みに行ったことがなかった。 


なぜ?
「まだ、未成年だったんです」 
なるほど。
「当時、女性バーテンダーは珍しい存在でした。活躍している人は誰なんだろうって本屋さんで探して、雑誌で見つけた女性バーテンダーの方が勤めていたホテルに入社したんです」 


しかし、バーで働くことは叶わなかった。配属先はレストラン。それから上司に絶えず「バーで働きたい、働きたい」とアピールするものの、なかなか認めてもらえない。 


鎌田さん、なぜ、それほどまでにバーテンダーにこだわったの?


「学生時代にアルバイトをしていたバーで、『女性バーテンダーはいらない』って言われたんです。その悔しさが原動力になっていたと思います。必要とされてないというか、何かをする前から無理っていうのはひどい話じゃないですか。だから、意地でもバーテンダーになってやるって」 
一念岩をも通す。しばらくして鎌田さんはバーへ配属となる。それから今まで約15年、バーテンダー一筋。 


得意なカクテルを聞いてみる。「即興でつくることが好きです」 鎌田さんは言う。客の好みや気分、飲みたい酒のイメージなどを聞き、そこから自分なりに一杯のカクテルをつくっていく。それがバーテンダーとしての愉しみの一つだと、鎌田さんは考える。とはいえ、わかりやすい注文ばかりではない。こんなことがあった。客が伝えてきたのは「ナツコの夏休み」。ちょうどそのとき、ナツコさんという女性が夏休み中ということで、そんなイメージのカクテルが飲みたいと言うのだ。禅問答?


「実はこういうリクエストがくるとワクワクするんです」 


頼もしい。さて、鎌田さんはどんな「ナツコの夏休み」をつくったのか。「即興の一番の難点は、なかなか同じものをつくることができないという点です。閃きでつくるので、思い返すと、あれ、私どんなお酒を使ったんだろうって、忘れちゃうんです」 


そう言って、屈託のない笑顔を見せた後、鎌田さんは、きっぱり。「即興。やっぱり、それがいちばん得意ですね」 取材前、「鎌田さんにとってバーテンダーは天職ですか」と、訊ねてみるつもりであったが、蛇足であると思い、胸にしまって帰路に着いた。


 


ピーター バー
●東京都千代田区有楽町1-8-1 ザ・ペニンシュラ東京24階
03-6270-2763
営/12:00~24:00、金・土曜は~翌1:0
0休/無休 
カード/可 
予約/不可
●カウンター席とテーブル席を合わせて40席(112席のレストランを併設)。サービス料10%。カクテル、ウイスキー各1700円~。ドレスコードあり(スマートカジュアル)。2007年オープン。深い紫色とラベンダー色を基調に、木とスチールが並ぶゆったりとした空間は、ここにしかないまったく新しいホテルバーをつくり出している。
東京メトロ・都営三田線「日比谷駅」、東京メトロ「有楽町駅」A6、A7出口に直結。ホテルの最上階に位置するバーへはロビー階から専用の直通エレベーターで向かう。


かまた・まり
●1977年12月1日、千葉県生まれ。「Peter バー」開業時よりシニアバーテンダーとしてバー全体を統括する。


<クレジット>文 枝川公一 撮影 有元伸也


<2013年3月号>




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