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名建築探検


2015年5月


大谷石と木材の組み合わせが奏でる安らぎ
日光金谷ホテル(栃木)

 


新緑に朱塗りの神橋が映える大谷川のほとりから急坂を上がると、重厚な白亜の洋館が姿を現した。大谷石の柱が並ぶエントランスの上に「KANAYA HOTEL」と書かれたシンプルな看板。ドアマンがさりげなくサポートする回転ドアの扉の真鍮板には「をす」と刻まれていた。  


「『おす』でないのは、お客様への敬意を表していると聞いています」と、フロント・企画担当の関根崇人さん。厚い赤じゅうたんが敷かれ、フロントには和洋のランプが灯っている。2階まで吹き抜けの趣あるこの空間に立つと、歴史の重みを感じざるを得ない。  


1873年、ヘボン式ローマ字の発案者、ヘボン博士のすすめで「カナヤ・カテッジイン」を創業して140年余。現存する日本のクラシックホテルとしては最古で、1893年に現在地で洋風ホテルとして開業した。宿泊客にはアインシュタインやヘレン・ケラ ーなどが名を連ねるように、明治〜昭和期は錚々たる外国人が多かった。  


館内にも大谷石の装飾が随所に見られる。大谷石は軟らかくて加工しやすく、フロントや階段、廊下などの意匠として木材と違和感 なく組み合わされている。栃木県で採れるこの石が使われたのは、アメリカの建築家フランク・ロイド・ライトが設計し、大谷石が多用された旧帝国ホテル本館の影響を受けている。同ホテルの完成は1923年。日光金谷ホテルの開業の方が早いのになぜ影響を受けているかというと、1893年に開業したのは現在の2〜3階で、その40年後に地面を掘り下げて1階部分が完成したから。  


宿泊客の増加やニーズに合わせて増改築され、1901年に新館、1935年には別館が建設された。同じ館内でも部屋ごとに少しずつ造りが異なり、見事な彫刻の調度品が何気なく置かれている。  


本館、新館、別館と竜宮の4館が国の登録有形文化財になっている。竜宮は敷地内のプール脇にあり、隣の池は凍結するとスケートリンクになるという。テラスからは日光連山が眺められる。



◎本館(左)と別館を見渡す車寄せ。ドアマンがカメラマンに早変わり 


<2015年6月号>

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【旅行読売 編集部】




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