第十回 渋谷道玄坂寄席
三遊亭白鳥独演会

「金銀亭Q蔵セレクション」

プロデュース:広瀬和生 


2014年11月


三遊亭白鳥

 


今回は、106()に行われた現代新作落語の旗手、三遊亭白鳥の独演会をレポートする。


【過去の落語レポートは、こちら




毎度お馴染み「八雲茶寮」さんの特注お菓子(毎回事前電話予約でチケットを購入した方へのプレゼント)は、「琥珀」が用意された。


香ばしい麦こがしのういろうと"豆の王様"といわれる虎豆の鹿の子を一緒に蒸し上げた贅沢な一品。


"鹿の子"とは、お餅や羊羹で作った餡玉の外側に形の整った蜜漬けの豆を隙間なく並べたものを言い、その様子が鹿の背の斑点に見えることから名付けられたという。


上品な甘さの虎豆ともっちもちのういろうが、食べ応え満点!開演前から幸せな気分になった。


おかし


【琥珀色が美しい〜。豆好きが悶絶するおやつ】




会場ロビーの物販コーナーには、白鳥師匠のCDやDVD、『東京かわら版』などの書籍がずらり!2千円以上の購入で師匠のサインをプレゼントするなど、粋な計らいも。


物販コーナー


CD


【"波紋を呼ぶよ!" 購入特典は、おちゃめな師匠のサイン】




【演目】


「聖橋(ひじりばし)」


「黄金餅池袋編」


~お仲入り~


「富Q」




さて今回の「渋谷道玄坂寄席」は、白鳥が創作した架空の噺家Q蔵の成長物語「金銀亭Q蔵」シリーズから選りすぐりの名作3編をお届けする。


噺家が主役の創作話は他に例がなく、3話連続で披露するのも今回が初という非常に貴重な会であった。




 一席目は、「聖橋」


池袋のビックリガード近くにあるボロアパートで、金銀亭Q蔵という売れない落語家が暮らしていた。今日も寄席からお呼びがかからないので、部屋に引きこもって古典落語の稽古。そこへお隣の北朝鮮人の老婆が怒鳴り込んで来た。


「毎日毎日ブツブツ念仏みたいなつまらない古典落語を聞かされて、こっちはノイローゼになりそうだよ!このヘタクソがっ!」


「何言ってんだ!俺は新潟の落研時代に"越後の圓生"と言われた男だぞ!古典は王道なんだよ!そのままやれば客が笑うんだ!新作なんて三流の芸人がやることなんだよ!」




その頃、池袋演芸場の番頭、進藤さんのところへバンダナ姿でしゃがれ声の男がやってきた。


「まさか、立川談志師匠じゃないですかっ!!」


聞けば、休養明けの肩ならしに、若手と3夜連続の二人会がしたいという。


「俺は新作が大っ嫌ぇだ!誰か古典の王道を信じて真っつぐ行くって奴はいねえのかい?」


「だったら二つ目で、金銀亭Q蔵ってのがいます!どうでしょう?」


「よし、じゃあQ蔵と"文七元結(ぶんしちもっとい)"のリレー落語をやろう。あいつが前半を話し、吾妻橋で文七が身投げをする場面で、俺が左官の長兵衛役で止めに入る。そこで入れ替わって俺が最後まで話すんだ。


いいか、あいつに言っとけ!余計なことはしなくていい、普通にやって談志につなげとな!」


【※ 文七元結の大まかなあらすじは、こちら




早速番頭の進藤さんから聞いたQ蔵は、やっとチャンスが巡ってきたと大張り切り!


「普通になんてやれるか、俺が談志をくってやる!」


そして、当日。談志目当てのお客が1万人も池袋につめかけ、号外まで出る始末。Q蔵はこの日のために黒紋付の着物を新調し、気合い十分!


お客のヤジにも負けず、トントンと順調に噺を進めていく。そして、遂に大事な吾妻橋のシーン。橋の欄干に手をかけ、身投げをする瞬間・・・


「この文七がぁ、旦那さまにぃ、会わせる顔がないとなればぁ、あっ!死な~ずば~なるまいっ!」 


歌舞伎風




歌舞伎の見栄を切るような台詞廻しで目立とうとしたQ蔵。舞台袖で観ていた談志は・・・


「進藤!俺はこういうことをやる奴が大ッ嫌いなんだよ!帰る!!」


「おいおい、談志出ねえじゃねえか!金返せー!!」


結局2日目も空回りし、皆大激怒!見かねた談志は、Q蔵を楽屋に呼びつけ


「てめえ、文七をどういうつもりでやってる?」


「死んだつもりで・・・」


「死んだつもりだと?!死ねっ!死ぬんだ!それが無理なら本物の身投げを見つけて、どうやって死ぬか聞いてこい!」




途方に暮れたQ蔵は、とぼとぼ歩いて御茶ノ水の聖橋まで辿り着いた。そこで、ボロボロの着物に滝のような汗をかき、顔面蒼白の男が欄干から今にも飛び降りようとしていた!


「あれは、三遊亭白鳥師匠!!勉強させて頂きます!」


白鳥の身投げからハッと気付いたQ蔵は、死にものぐるいで工夫を重ね3日目の舞台に挑むのだが・・・。




事前にフィクションとは聞いていたが、池袋の街並や登場人物の描写がやけにリアルで、うっかり信じてしまいそうに。
ストーリーも古典落語の名作「中村仲蔵」や「淀五郎」のエッセンスが散りばめられ、落語通も大満足!一席目から大爆笑で、早く続きが聴きたくて仕方がなかった。




続いて二席目は「黄金餅池袋編」


談志師匠との二人会で注目を浴びたQ蔵だったが、天狗になって再び仕事を干されてしまう。


いつものようにボロアパートでふてくされていると、お隣の北朝鮮人の老婆がゲホゲホと咳き込んでいる。トック(朝鮮半島の餅)が食べたいというので、へそくりで買い与えるが


「あたしゃ、北朝鮮の高級幹部だよ!あんたみたいなクズ噺家の前で喰えるか!とっとと帰りな!」


心配でこっそり老婆の部屋を覗くと、大量の金の粒を懐から出し、トックに詰めて丸呑みしていた!


「あたしの寿命もあと僅か。こいつを祖国に持って帰らねば!んぐぐ!苦しぃ~!!」


モチ丸飲み




そのまま老婆は窒息死。そこへお向いの海賊版DVDを製造している中国人のヤンさんが現れ


「ザマア見ろ!私このババアにたくさんお金騙し取られたね。Qさん、誰も見てないから二人で山分けするよ!」


「どうやって金を取り出すんだい?」


「闇の火葬場で焼けばいいね。私どこにあるか知ってる。」




老婆をキムチの樽に入れ、夜になってからアパートを出た二人。色々なからくりを抜け、最後に辿り着いた先は、なんと池袋演芸場!


「ここの支配人は恐ろしい人、今から呼ぶあるよ。"らくださーん、いますかー?”」


「あっ!誰かと思ったら番頭の進藤さんじゃないですか!!?」


らくだこと進藤さんが呪文を唱えると、突如舞台裏の扉がゴゴゴッと開き、秘密の入り口が出現。


「Qさん、あのらくだはガメツイ男よ。金を横取りされないように気をつけるね。」




進藤さんは秘密の火葬場で老婆を焼きながら、Q蔵に尋ねた。


「お前、なんでヤンみてえな闇のシンジケートの一員と付き合ってる?」


「だって全然俺を寄席で使ってくれないじゃないですか!談志師匠と二人会をやった男なのに!」


「まだ気付かねぇのか?お前は、古典が似合わねぇ。落語の主人公みたいなお前こそ新作をやるべきなんだ!」


そうこうしているうちに老婆が焼き上がり、こっそり骨の中から金を取り出すQ蔵。しかし、あっさり進藤さんに見つかってしまい・・・




闇の火葬場の支配人"らくだ"こと進藤さんは、果たして悪人なのか?善人なのか?金塊の行くヘは?


個性的なキャラクターと予想外の展開に、どんどんQ蔵の世界にハマってゆく私。後ろ髪を引かれつつ、お仲入りに突入。




お待ちかねの3席目は、「富久」ならぬ「富Q」


「近代落語の祖」といわれる初代三遊亭圓朝が作った古典落語の名作を直系の弟子にあたる白鳥がどう料理するのか?わくわくが止まらない。




進藤さんのアドバイスで、古典から新作落語に移行したQ蔵。新しい噺を作っては、仲間とお披露目会をしていたが、泣かず飛ばす。とはいえ、Q蔵も年功序列で来春に真打ち昇進が決まっていた。


「後ろ幕とか手ぬぐいとかどうすりゃいいんだ。仕事も金もないのにどうしよう・・・」


仕方がないので、身分を隠して年末にアルバイトをすることにした。


「みなさーん。年末宝くじはいかがですか~?2億円が当たりますよ~。蕎麦~う~」


そこへみずほ銀行の吉村さんがやってきて、売れ残った宝くじ1枚を無理矢理売りつけて来た。


「49組の3725番。死(4)ぬまで苦(9)労、み(3)な(7)不(2)幸(5)!ね、Q蔵くんにぴったりでしょ!」




ボロアパートで落ち込むQ蔵だったが、捨てるのも惜しいからと、縁起の良さそうな浅草雷門の提灯の中に宝くじを入れ、談志師匠との二人会で着た黒紋付の首元に飾って神頼み。


「せめて1千万でいいから、当てて下さい!そしたらこんなアパート引っ越して、噺家も辞めます!」


「じゃあその黒紋付をあたしによこしな!その方が着物も喜ぶ。」


突然死んだはずの北朝鮮の老婆が現れた!!聞けば、自分は双子の妹で、秘密工作員の姉からスパイ活動を引き継いだという。


「黒紋付は、落語家の魂だ!ババア出てけ~!!」


Q蔵はヤケ酒を大量に飲み、そのまま寝入ってしまった。




「ドンドンドン!!」


真夜中に激しく戸を叩き、お向かいの中国人のヤンさんが駆け込んで来た。


「Qさん、起きて!池袋演芸場の方角が火事よ。すぐ助けに行って!」


幸い火事は途中で止まり、Q蔵は池袋演芸場のお席亭(寄席の亭主)と飲みに行くことに。しかし、待っている間に再び寝入ってしまう。


「おい!Q蔵起きろ!今度は東の空、ビックリガードの辺りが真っ赤だ!」


猛ダッシュで家に帰ると、アパートは火の海。


「あ~!!!!俺の大事な黒紋付がぁ~!!」


着物焼ける




それからお席亭のご好意で、池袋演芸場の客席に住み始めたQ蔵。早く引っ越したい一心でアルバイト先のみずほ銀行へ向かうと、ちょうど年末ジャンボ宝くじの結果発表の日!


「1等2億円の当選番号は・・・49組の3725番。死ぬまで苦労、皆不幸!!当たった~!!」


しかし、家は全焼、当りくじもない。失意のどん底に落ちたQ蔵は、アパートの焼け跡で自殺を図ろうとするのだが・・・。




老婆とQ蔵の掛け合いでしんみり終わると思いきや、最後のオチをいい間違えて大爆笑!白鳥の話芸に私の心は揺さぶられっぱなしであった。


ちなみに金銀亭Q蔵シリーズは、元々バラバラに作った話のため、(黄金餅で死んだ老婆が富Qで復活など)つじつま合わせが大変だから二度と連続ではやらない、と白鳥は言っていた。


とはいえ、すっかりQ蔵ファンになった身としては「任侠流れの豚次伝」のように是非シリーズ化してほしい!




さて次回は、馴染みの渋谷・道玄坂を飛び出し、Xmasムード満点の恵比寿 The Garden Hallで行う年末スペシャル!!


橘家文左衛門、三遊亭白鳥、桃月庵白酒、柳家三三ら人気噺家4人が、年の瀬に聴きたい名作を一挙披露する!どうぞ、お楽しみに~。




三遊亭白鳥(さんゆうてい はくちょう)


新潟県出身の落語家。1963年生まれの51歳。オリジナルの新作落語を得意とし、レパートリーは100本以上。
ついに「流れの豚次伝」シリーズ全10話が完結し、池袋演芸場で10日間通し口演のトリを務めた。
趣味は、キャンプ、釣り、マンガ喫茶店訪問。




《次回公演情報》


次回告知


恵比寿ルルティモ寄席 2014 
supported by 渋谷道玄坂寄席 
プロデュース:広瀬和生 


橘家文左衛門/三遊亭白鳥/桃月庵白酒/
柳家三三


1215()恵比寿The Garden Hall


【演目】
橘家文左衛門「文七元結」
三遊亭白鳥「隣の町は戦場だった」
桃月庵白酒「芝浜」
柳家三三「富久」


 全席指定 ¥4,000(税込) 1ドリンク付
未就学児童入場不可
ロビーにて飲食展開あり、客席内飲食禁止


【チケット発売中!!】


 公演詳細は、こちら




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