湯けむりにかすむ 紅葉の秘湯


2014年9月


六合温泉郷
尻焼温泉・花敷温泉・京塚温泉・応徳温泉
(群馬)

 


秋に染まった渓谷をドライブ
野趣満点の川の露天風呂へ


★紅葉の見頃10月中旬~11月上旬




 


草津、伊香保、万座、四万……名だたる温泉地に恵まれた群馬県西部にあって、長野県、新潟県と接する中之条町六合(くに)地区は、実は秘湯の宝庫である。


4年前に合併された旧六合村のエリアに、尻焼、花敷、京塚、応徳、六合赤岩の温泉が湧き、六合温泉郷を形成している。そのすべてが源泉かけ流し。泉質は少しずつ異なる。知られざるいで湯の地に好奇心を抑えきれず、関越道渋川伊香保ICを降り、中之条町を目指して車を走らせた。  


JR吾妻線に沿うように走る国道353号、145号を進むと吾妻渓谷に差しかかった。11月上旬には、約3・5㌔の渓谷がカエデやウルシの赤、クヌギの黄色で埋め尽くされる。渓谷の最寄り駅、川原湯温泉駅は、八ッ場(やんば)ダム建設のため10月1日から吾妻川の対岸に移され、吾妻線は一部、新しい線路を通ることになる。新線は8割近くがトンネル区間で、車窓はこれまでの錦絵から一変する。治水や発電のためとはいえ、人間の手では作りだせない自然の景観が失われてしまうことに寂しさを感じずにはいられない。  


長野原草津口駅を過ぎる辺りまで吾妻線と並走し、右折して国道292号に進むと白砂渓谷ラインに入る。六合地区の中心部を南北に流れる白砂川によって、野反湖(のぞりこ)まで約28㌔に渡り深い渓谷が造りだされている。カエデの紅葉やカラマツの黄葉、黄金色に輝くナラが入り乱れる、目のくらむような風景を見ながら走る絶好のドライブコースだ。 道の駅六合でひと休み。農産物や特産品を販売する「六合観光物産センター」と、7月にオープンしたばかりの喫茶「お休み処くに」、日帰り温泉「応徳温泉くつろぎの湯」などからなる。ちなみに、ここから今日の宿、尻焼温泉までコンビニエンスストアなどはないので、必要なものを買い込んでおこう。


「お休み処くに」では、観光案内も行っている。観光客に声をかけているのは、六合村最後の村長、山本三男さんだ。「白砂渓谷の紅葉は標高1500㍍の野反湖から1か月かけて徐々に下りてきます。標高差が約900㍍もあるので、10月上旬~11月中旬はどこかで必ず紅葉に出合えますよ」と教えてくれた。  


白砂渓谷ラインを左に折れて県道55号を進むと、花敷温泉の一軒宿「花敷の湯」を過ぎ、目的の尻焼温泉川の湯に到着した。長笹沢川を堰き止めて造った巨大な野天風呂で、湯船の底から温泉が湧き、下流へザブザブと流れ落ちる。なんともダイナミックな温泉だ。混浴だがバスタオルや水着を着用でき、女性も入りやすい。脱衣所はないので、尻焼温泉に泊まる人は宿で着替えるか、車の中で準備しておくといい。  


これだけ広いと湯加減はどうだろうと恐る恐る足をつける。思いのほか適温だ。源泉温度54度の湯が岩の間から湧いている。場所を移しながら、好みの湯加減を見つけるのも楽しい。カルシウム・ナトリウム-硫酸塩-塩化物泉の湯は無色透明で癖がない。尻焼温泉の宿「白根の見える丘」の中村善弘さんは「悪い物を吸ってくれる温泉と伝わり、地元の人は“吸い出し”と呼んでいたんだよ」と話した。


ふと川岸を見上げるとカエデやクヌギなど広葉樹が生い茂っている。「白砂渓谷もそうですが、この辺りは植林していない天然の雑木林です。秋はさまざまな色が混じって華やかで見飽きませんよ」と中之条町観光協会の原沢香司さんが言う。肌にやさしいお湯も相まって、ついつい長湯をしてしまいそうだ。


<2014年10月号>

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【旅行読売 編集部】




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