感動の一皿
 鶏白湯ラーメン編


2013年1月


2012年は“鶏白湯ラーメン”の大当たり年!!
次々と実力店が誕生し、まさに群雄割拠の様相だ。鶏の滋味あふれる味わいで風邪を吹き飛ばし、肌に艶をもたらすコラーゲンもたっぷり……。
いま鶏白湯を食べずして、ラーメンは語れない!


 


汁や きりん(阿佐ヶ谷)
鶏白湯麺 蔭山(高田馬場)
麺匠 たか松 日本橋茅場町店(茅場町)
麺巧 潮(淡路町)




ラーメン新潮流2013 


ついに鶏白湯ブームがやってきた!かねてより鶏白湯の魅力を叫び、1995年には本誌で特集も組んでもらったのですが、大ブームには至らず、肩身の狭い思いをすることに。 


しかーし! 2012年のラーメン業界は鶏白湯が席巻! そう、この8年間で鶏白湯はじわじわと根を下ろしていたのです。 


鶏白湯をわかりやすく説明すると、豚骨スープの鶏バージョン。鶏スープというとあっさり透明なイメージでしょうが、豚骨と同じように強火でグツグツと炊けば、白濁して濃厚なスープになるのです。こってりまろやか、なおかつ豚骨と違って獣臭がなく飲みやすい、いいとこ取りのスープなのです。 


そんな鶏白湯の「これぞ王道!」なお店が「汁や きりん」。経営する居酒屋の鶏スープ鍋が人気で、その締めのラーメンを研究するうちに、専門店を出すに至ったそう。確かに鶏白湯は博多の水炊きと同様の材料・製法で、鍋が出発点の開発経緯は合点がいきます。 


丼を前にすると美しい乳白色のスープにうっとり。れんげを差し込むとかすかな抵抗感、このとろみこそ鶏白湯の魅力です! スープを一口……ウマい! 重厚なコクがありながら、鶏の優しい香りと繊細な旨味が張り巡らされ、一口で舌も心も鷲掴みにされます。大山鶏を強火で崩しながら炊き上げ、丁寧に漉して脂も取り除いたスープは、雑味やベタつきがなく後味は軽やか。「豚骨スープより、鶏白湯のほうが素材の味が素直に表れます」と店長の鈴木さん。塩・醤油・味噌・豚骨に続く「第5のスープ」鶏白湯のポテンシャルを感じさせてくれる一杯です。


鶏を丸ごと一羽溶かしたような滋味あふれる王道の一杯!


 


 


続いて「鶏白湯麺 蔭山」。店長の蔭山氏は中国料理の名門「筑紫樓」の料理長を務めたこともある人物。あるとき、現在の鶏白湯ブームの礎を築いた両国の名店「まる玉」のラーメンに衝撃を受け、培ってきた中華の技法も駆使して至高の鶏白湯を完成。 


まったりと舌にからみつく粘度の素は大量の手羽先。豊富なコラーゲンが乳化を促進させてトロトロのスープに仕上がります。ややもすると一本調子になりがちな鶏白湯の弱点を補うため、海老の香味油と、爽やかな後口を演出するレモンを添え、丼の底まで目視させる“汁完”の仕掛けにしています。


トロトロスープにコラーゲンが凝縮。高い技術が窺える洗練の鶏白湯!


 


「麺匠 たか松」は京都からの進出店。鶏白湯という言葉は僕のネーミングですが、鶏を使った白濁スープは以前から各地に点在しており、なかでも店舗数が多いのが京都。創業40年を超える「天天有」が有名ですが、こちらは2011年の開店で、いわば京都鶏白湯第2世代。スープはゼラチン感が強く、飲むと唇がペタッとくっつくほど。その正体はたっぷり投入するモミジです。 鶏白湯の難しさは鮮度の保持で、香りと味の劣化が早いため、スープは冷蔵保存するのが共通の製法。さらにこちらでは圧力鍋で一日3回に分けて仕込むことにより、ぽってりした濃度とフレッシュな香りをキープしています。


濃厚豚骨好きに食べてほしい。鶏の魅力がガツンと炸裂!


 


 


最後に鶏白湯の最前線をご紹介します。「麺巧 潮」は2012年9月オープンの新店。肉巻きアスパラが鎮座するビジュアルにも驚きますが、スープはさらに斬新。ホワイトシチューを彷彿させるクリーミーな味で、玉ねぎやじゃがいもの甘味がなんとも優しい。店主の土屋さん曰く「鶏白湯の魅力はクセがないところ。さまざまな食材と相性がいい」。試作中のポルチーニ茸を使った一杯も味見させてもらいましたが、ポルチーニの華やかな香りが広がり、鶏白湯のふくよかな旨味が下支えする絶妙なバランス。鶏白湯の可能性を大いに感じさせてくれました。 8年の時を経て巻き起こった第2次鶏白湯ブーム。各店主の話を総合すると「鶏という素材自体が生きて、他の素材も生かす」のが鶏白湯の魅力。つまりシンプルなラーメンも重層的なラーメンもつくれるということで、ブームの一語では片付けられない、ラーメンの革新を予感させてくれます。


この味わいはホワイトシチュー?鶏白湯の新たな扉を開く一杯!


 


 <店データ>


汁や きりん
東京都杉並区阿佐谷北1-43-6
03-6768-0750
営/11:00~14:50(L.O.)、18:00~23:50(L.O.)、日祝は11:00~21:50(L.O.)
休/毎月11日、17日、その他にどこか1日 
●鶏塩白湯麺780円。鶏の旨味が詰まったスープを最後まで飲み干せるよう清涼な大葉を浮かべ、薬味も豊富に揃える。自家製えびオイルをのせた鶏白湯海老油麺は980円。夜はモツ煮500円などをつまみながらの居酒屋利用も。全8席。昼営業は禁煙、夜営業は喫煙可。JR「阿佐ケ谷駅」南口より7分。


鶏白湯麺 
蔭山東京都新宿区高田馬場1-4-18
03-6278-9204
営/11:30~14:30(L.O.)、17:30~21:30(L.O.)
休/日曜 
●名物 塩そば850円。麺は粘度の高いスープに負けない太麺。伊勢海老を使った香味油が奥行きをもたらす。自家製の芝麻醤を使った担担麺980円、醤油そば880円。全12席。禁煙。JR「高田馬場駅」早稲田口より5分。


 


麺匠 たか松 
日本橋茅場町店東京都中央区日本橋茅場町2-3-9 ハヤオビル 1階
03-3662-0088
営/11:00~23:00 売り切れ仕舞い 基本は無休 禁煙
●塩鶏らーめん750円。味つけは鶏を生かすシンプルな塩味仕立て。麺は喉ごしのいい中細ストレートだ。鶏魚介つけ麺850円のほか餃子280円や、から揚げ300円などのサイドメニューも。全13席。禁煙
。東京メトロ「茅場町駅」12番出口より2分。

 


麺巧 潮東京都千代田区神田淡路町2-4-4アール神田淡路町地下1階
03-6206-9322
営/11:00~19:00(L.O.)、売り切れ仕舞い
休/日曜 
●鶏白湯そば840円。洋風な味の秘密は生クリーム。具もポーチドエッグなど既成概念にとらわれない仕様だ。にほんいち醤油そば840円。大盛り無料。全12席。禁煙。東京メトロ「淡路町駅」A3出口より3分。


<クレジット>
撮影・伊藤千晴 文・石神秀幸「神の舌を持つ男」で知られるラーメン評論家。テレビ東京「TVチャンピオン」ラーメン王選手権を連覇し、フードジャーナリストとしても活躍。


 


 【dancyu編集部】


<2013年1月号>




送料込みで発売日前にお届け!お得な定期購読はこちら
http://www.president.co.jp/dan/subscribe/