感動の一皿 
 人生最後の一食編
 ナポリタンVSオムライス


2012年6月


 一人前400gのド迫力
この“まみれ感”こそ真骨頂!


さぼうる2(神保町)


口の中で味を完成させるのがオムライスの美学である!


ランチョン(神保町) 


 


昭和に少年時代を送った者にとって、トマトケチャップの味と香りは強烈な吸引力をもつ。寺山修司も『トマトケチャップ皇帝』という映画を監督していたぞ。 あのケチャップの明るい赤は高度成長期の日本の希望の象徴だった。ケチャップものを食べると元気が出たものだ。 


で、ナポリタンとオムライス。ともにケチャップが主役で日本生まれの料理だ。最後の一皿にどちらをとるか、“貞淑な醜女と奔放な美女”、妻としてどちらを選ぶかという問題より難しい。 


ケチャップの魔力を生かした一皿というのならナポリタン。ナポこそケチャップありきで誕生した料理だろう。ナポではスパゲッティもハムも玉ねぎもピーマンもマッシュルームも素材のすべてがケチャップに奉仕する。つまり強い火力でジャーッと炒め上げることで、具材が一体化しケチャップまみれになる。この“まみれ感″がナポリタンの骨頂だ。神保町「さぼうる2」には唇までケチャまみれになり、うっとり目尻を下げている輩がたんといる。ついでにいえば粉チーズとタバスコは水戸黄門における助さん格さんで、これがないと画竜点睛を欠く。


一方のオムライスの魅力はケチャップとご飯の幸福な出会いにある。豊葦原瑞穂国のご飯とケチャップの融合は革命だ。オムライスでは卵はご飯とケチャップの仲人役。だから巷に跋扈する卵が主役のような半熟卵のオムライスは亜種である。紡錘形にきっちり巻かれた神保町「ランチョン」のオムライスこそ正調。ケチャップライスを卵焼きがしっとり包み、口中でご飯、ケチャップ、卵の風味が渾然一体となってオム美学は完結する。 


ナポとオムどちらをとるか。ハムレットの心境であるがしばし熟考。よし決めたぞ! と、おっとここで紙幅が尽きた。


 



喫茶店のナポリタンの王道を往く。一人前400g、サラダ、珈琲付きで850円。 1.5㎜とやや細めのスパゲッティを使用し、口当たりが柔らかいのが特徴。



白ワイン、澄ましバター、パルメザンチーズを隠し味に使ったオムライスは老舗洋食店の味。850円。温かいご飯を用いてつくるのでふっくらした仕上がりだ


 


<店データ>


さぼうる2(ツー)
東京都千代田区神田神保町1-11
03-3291-8405
営/11:00~22:00(L.O.) 
休/日曜 祝日 
●隣接する「さぼうる」は喫茶中心。「さぼうる2」は食事がメインだ。
地下鉄神保町駅A7番出口すぐ。


ランチョン
東京都千代田区神田神保町1-6 
03-3233-0866
営/11:30~21:00(L.O.)、土曜は~20:00(L.O.) 
休/日曜 祝日
●自慢メンチカツ1000円、各種生ビール620円~。
地下鉄神保町駅より徒歩2分。


 


<クレジット>文・北吉洋一 撮影・岡山寛司


【dancyu編集部】


<2012年6月号>



以上、神保町の現場からお送りしました!


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